かたつむりのフランス語カフェ

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フランスの国民的俳優ジェラール・ドパルデューのスキャンダルまとめ #Metoo 

ジェラール・ドパルデューGérard Depardieu(74)といえば、フランスでは知らない人のいない国民的俳優で、その功績を讃えて、1996年には当時のシラク大統領からレジオンドヌール勲章が授けられたほどだ。

その出演作品を挙げていけばキリがない(出演映画は200本を下らない)。主な代表作は、一躍名を馳せる契機となった、ベルトラン・ブリエ監督の『バルスーズ』(1974年)、セザール賞最優秀主演男優賞を受賞した、トリュフォー監督の「終電車」(1980年)、大成功を収めた『シラノ・ド・ベルジュラック』(1990年)。2023年に公開された日仏合作映画『Umami(うま味の旅)』でご存知の方もいるかもしれない。

その穏やかならぬプライベート面が世間の注目を集めることはたびたびあった。たとえば、フィデル・カステロやウラジミール・プーチンなどの独裁政治家との交友。2013年にはプーチン大統領との親交を活かし、税金対策のためにロシア国籍を取得している。

女性遍歴も目まぐるしい。女優のエリザベート・ギニョと1970年に結婚するが、1992年に別居。1992年、モデルのカリーヌ・シラとの間に女児が生まれる。1996年にギニョと離婚し、1997年から2005年まで、女優のキャロル・ブケと交際。ブケと破局して一年後、フランス系カンボジア人エレーヌ・ビゾとの間に男児が生まれる。2005年以後は、クレマンティーヌ・イグーと同居している。

さて、そんなドパルデューに強姦疑惑が持ち上がったのが2018年8月のこと。Metoo運動が盛り上がりを見せていた時代の風潮のなかで、女優のシャルロット・アルヌーがレイプ被害を理由にドパルデューを訴えた。この訴えは、2019年6月に証拠不十分で一度は不起訴処分になるものの、2020年8月、新たな証拠が出てきたことでパリ検察は捜査を再開。12月に俳優は強姦罪と性的暴行罪の容疑で起訴された。

2023年4月には、フランスの独立系オンライン新聞「メディアパート(Médiapart)」の記者マリーヌ・チュルシが、ドパルデューに性的被害を受けたという13人の女性(女優、メイク、技師)の証言を発表した。

2023年9月には、女優のエレーヌ・ダラスが2007年に受けた性的暴行で俳優を訴えた。

一連の告発を受け、ドパルデューは、2023年10月1日、フィガロ紙に「ついに真実を語る時が来た」というタイトルの公式声明を発表した。そのなかで俳優は、「女性を弄んだことは今までに一度も、誓って一度たりともない」と断言した。

水かけ論が続くかに見えた2023年12月7日、フランス公共放送「France 2」がドパルデューの性犯罪を暴く衝撃の映像を公開した。2018年、北朝鮮政権樹立70周年に同国を訪問したジェラール・ドパルデューを捉えた映像である。本人はカメラが回っていることを自覚している。にもかかわらず、通訳の女性に対して、耳を疑うような卑猥な発言を連発(「私のパンツの中には大黒柱がある」、「私の体重は124キロだが、勃起すれば126キロになる」など)。なかには、乗馬をする12、3歳の女の子を性的対象として眺める場面もある。

このドキュメンタリー映像がきっかけで、ドパルデューの社会的評価を全面的に見直そうという気運がフランス全土で高まっている。

12月15日、アブドゥルマラク文化相は、俳優の振るまいは「フランスの恥さらし」であり、レジオンドヌール勲章の撤回手続きを開始する意向を示した(しかしマクロン大統領は、12月20日に行われたテレビ・インタビューで、ドパルデューを擁護し、レジオン・ドヌール勲章の撤回は間違っているとした)。

12月18日、パリのろう人形館「グレバン博物館」はドパルデューのろう人形を撤去。

12月19日には、また一人、スペインのジャーナリストRuth Bazaが1995年に受けた性的暴行で俳優を訴えた。

映画界では、権威ある映画監督や俳優による強姦・わいせつ疑惑が後を絶たない。今回の暴露映像を受けて、ドパルデューの一件がどのような展開を見せるのか注目である。