かたつむりのフランス語カフェ

吾輩はふら語教師である。名前はかたつむりである。

フランス体験記① フランスの大学で学ぶ

ボンジュール!フランス語教師のかたつむりです。

さて、今日は、ボクがフランスで経験したことを綴る「フランス体験記」の記念すべき第一弾として、「フランスの大学」のお話しをしたいと思います。

ボクは201X年~201X年にかけてパリのソルボンヌ大学(旧パリ第四大学)文学部フランス文学科(Licence Lettres Modernes)で三年間を過ごした経験があります。今回はその三年間を振り返って、フランス文学科の実態や、日本の大学との違い、留学生に必要な心構えなどをお話ししたいと思います。これからフランスの大学へ留学を考えている方はぜひ参考にしてください。

 


目次

フランス文学科ってどんなところ?

フランス文学科では、古代から現代まで各時代の文学を一通り勉強します。具体的には、古代ギリシャ・ローマ、中世、ルネッサンス、古典主義時代、啓蒙主義時代、十九世紀、二十世紀。学期にもよりますが、一学期に読まなければいけない文学作品は5~10冊です。けっこう多いので、ボクは邦訳が手に入るものは日本から取り寄せ、それをまず読んでからフランス語原典にあたっていました。言語学およびラテン語中世フランス語も必修でした。中世フランス語(笑)!

キャンパス

いろいろな学部が集まったキャンパスをもつ日本の大学とは違い、ソルボンヌ大学はそれぞれの学部がひとつのこぢんまりした敷地を持って点在しているので、異なる学部間の交流がほとんどなく、キャンパス・ライフはけっこう地味でした。一、二年生の間は、学食と自販機がいくつかあるだけの17区のキャンパス。三年生になると、5区にある、いわゆるソルボンヌの主キャンパス(といってもやはりそれほど大きくはありません)に移ることができますが、このキャンパスは伝統を重んじるあまり不便なところが多く、長椅子だけで書くためのテーブルがない席がたくさんありました。いかにもパリの名門大学っていう雰囲気はあって、見ている分には楽しいんですが。

授業時間

授業時間は日本の大学とほぼ同じような感じです。1日2、3コマくらいでしょうか。

授業形態

授業形態としては、講義型(Cours magistraux)と演習型 (Travaux dirigés)があります。

講義型は講堂で先生の話をただ聴くだけです。

演習型は小グループ制の授業で、発表があることもありますが、義務ではないことがほとんどでした。ディスカッションみたいなこともありませんでした。ボクはどちらかと言うと内気な性格なので、これは有り難かったです。フランス文学科で要求されるのは、主に筆記の能力です。

講義型であろうと演習型であろうと、授業は先生の話を聴いてノートを取るのが基本です。ノートは紙に取る人もいれば、パソコンで取る人もいます。

成績評価

成績評価は、期末テスト(と中間テスト)の点数をもとに20点満点で行われます。フランスでは、10点取れば及第とされます。学期全体の点数も20点満点で平均が出され、10点を取ればその学期はパスできます。「10点で合格だったら簡単じゃないか」と思われるかもしれませんが、フランスの評価はかなり厳しいので(ボクは一年生の時に一度テストで20点満点中3点を取りました)、落第する人がかなりたくさんいます。日本の大学は「入学するのは難しいけど、学位を取るのは簡単」ですが、フランスは全く逆で、「入学するのは簡単だけど、学位を取るのは難しい」のです。

ちなみに、留学生はテストに仏仏辞書を持ち込むことができます。

学生

当たり前ですが、大部分の学生はフランス人です。日本人に興味のあるフランス人は一定の割合で確実にいるので、その気さえあれば、友達を作るのはそれほど難しくありません。フランスではHayao Miyazakiがやはり強いですね。

日本人の学生はボクの他にも何人かいました。アジア系では、中国人が多かった印象です。女性と男性の比率については、フランス文学科は圧倒的に女性が多かったです。7-8割くらいが女性でしょうか。

それから、facebookなどのSNS上に、学科ごとに同級生グループがあるはずなので参加しましょう。有益な情報や生々しい愚痴が聞けるだけではなく、授業のノートが上がっている場合もあります。

ちなみに、学生同士は初対面であってもふつうお互い « tu »で話します。 « vous »を使う必要はありません。

留学生に必要な心構え

フランス語レベルはどれくらい必要?

日本からフランスの大学の学部に入学を希望する場合、一般的に、フランス語能力B2レベルを保持していることが条件になります(キャンパス・フランスのウェブ・サイト参照)。ただ、B2というのは、応募に必要な最低条件ということで、残念ながら「B2があれば十分」とは言えません。実際、ボクに関して言えば、特に一年目は先生が何を言っているのかぜんぜん分からず、日本から持ってきたSonyボイスレコーダーでこっそり授業を録音して、家で何度も聞き返して文字起こしをしていました。

勉強量はどれくらい必要?

落第しないためにはかなりの勉強量が必要です。フランス語がB2レベルくらいの場合、特に一年目はきついと思います。ボクは、先ほども言ったように、録音した授業を何度も聴いて勉強していました。テストの前日は徹夜をすることも少なくなかったです。でも、一年目を凌ぐことさえできれば、後は楽になる一方なので安心してください。実際、ボクに関して言えば、二、三年目は成績がぐんと上がり、クラスで一番の点を取ったり、レポートが模範解答として先生に採用されるなど、自尊心をくすぐられたことも何度かありました。

とはいえ、ボクの場合は、留年できない事情があったので自分に鞭打って勉強していました。一般論を言えば、フランスでは留年や転学、退学は珍しいことではありません。一年くらいの留年は恥でもなんでもないので、あまり自分にプレッシャーをかけすぎないようにしてくださいね。メンタルヘルスが何よりですから。

留学前にやっておくべきことは?

ボクのおすすめはやはり、専門分野の知識を先取りしておくこと。文学だったら、古典作品をできるだけ読んでおくこと。聴き取りに関しては、無料のオンライン授業サイトMediaclasse https://www.mediaclasse.fr/)で文学作品の解説を聴いてみることをオススメします。講師は平易なフランス語で説明してくれるので(フランス語字幕もあります)、とてもわかりやすいです。留学前の準備にうってつけであるばかりではなく、留学中も使えます。

 

以上、ボクが実際にフランスの大学で学んだ体験をお話ししました。いろいろ大変ですが、本格的に勉強する覚悟のある方には留学はオススメです。

これから留学される方、がんばってくださいね。陰ながら応援しています。

それでは、また。

À bientôt !