かたつむりのフランス語カフェ

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フランス新首相ガブリエル・アタルとは何者か? 経歴、同性愛公表、いじめにあった過去など

年末からすでに広がっていた内閣改造の噂だが、1月8日、エリザベット・ボルヌ首相が辞表を提出し、マクロン大統領が受理したことで事実となった。翌9日、国民教育相ガブリエル・アタル氏(34)の首相就任が発表され、共和政史上最も若い首相が誕生した。

そのガブリエル・アタル Gabriel Attal とは一体どのような人物なのだろうか?

一言で言うと、アタル氏は目覚ましいキャリアを持つエリート政治家であると言える。しかし、いじめにあった過去や、同性愛を公表しているという側面も注目に値する。

目次

ガブリエル・アタルの経歴

まずは簡単な経歴を紹介。

ガブリエル・アタルは1989年3月16日パリ郊外クラマールに生まれる。父のイヴ・アルは映画プロデューサー。母のマリ・ドクリスは映画制作会社の社員。三人の姉妹と養子の弟がいる。

2006年、社会党に入党。パリ政治学院で学業に励む傍ら、2007年のセゴレーヌ・ロワイヤル氏の大統領選出馬に尽力。2012年、大学を卒業。

2012年、マリソル・トゥーレーヌ保健相のオフィスで初のポストに就く。

2014年、ヴァンヴの市議会議員。

2016年、社会党を脱退し、エマニュエル・マクロン氏の新政党「En Marche(前進)」に入党

2017年、28歳で国会議員に当選。

2018年1月、マクロン氏の政党「共和国前進(La République en Marche」の報道官。

2018年10月、29歳で、国民教育・青少年大臣付副大臣

2020年7月、政府報道官に就任。コロナ禍で世間に広く顔を知られることになる。

2022年5月、経済・財務・産業及びデジタル主権大臣付公会計担当大臣

2023年7月には、国民教育・若者大臣に就任。学校でのアバヤ(イスラム教徒の女性の衣装)の着用の禁止やいじめ防止対策などに取り組んだ。

2024年1月9日、34歳で首相就任

同性愛の公表

彼はホモセクシュアルであることを公表している政治家としても有名である。欧州議会議員のステファン・セジュルネ氏と連帯市民協約(PACS。フランスでは結婚とほぼ同等の社会ステータス)を結んでいる。二人は、2015年、財務省で行われた会議で恋に落ちたという。当時、ステファン・セジュルネは経済大臣でエマニュエル・マクロンの顧問、ガブリエル・アタルはマリソル・トゥーレーヌの顧問であった。

アタル氏が同性愛者でありセルジュネ氏と交際していることは、かつての同級生で弁護士ジュアン・ブランコの著書Crépusculeで明らかにされた。以来、アタル氏は複数のインタビューで自身の性的指向に言及。「自分の思う時に自分の思うやり方で同性愛を公表したかった」と、第三者によるカミングアウトを残念に思っている心境を明かした。

なお、アタル氏の首相就任はLGBT各団体から歓迎された。

いじめにあった過去

仏テレビTF1の番組Sept à huitで、アタル氏はパリの私立学校エコール・アルザシエンヌ在学中、いじめにあったと告白している。「中学の終わり頃でした。私は14、5歳で、生徒の見た目についてコメントを書くように促すウェブサイトを作った生徒がいました。私はそこでホモとか女々しいとか言われました。当時はまだ自分の性的指向については誰にも話していなかったので、憶測に基づいた悪口でした」。このいじめは数ヶ月続き、とてもひどかったという。「苦しかったです。最悪なのは、その苦しみがいつまでも終わらないように思える時です。辛いのは、誰にも話せる人がいないように思えることです。幸にして、私は教育委員会に話をすることができ、彼らは真剣に受け止めてくれました」

2023年7月に教育大臣に就任したアタル氏は学校のいじめ問題を最優先課題にしていたが、具体的な結果を残す前に首相就任となった。

まとめ

ガブリエル・アタルは目覚ましいキャリアをもつエリート政治家だが、同性愛公表いじめにあった過去をもつなどの側面もある。甘いマスク、耳に心地よい声、知的かつ真摯な姿勢で、フランス国民のあいだで人気は高い。しかし、まだ34才と年が若く、さらに役職を転々としているため、政治家としてこれといった実績はまだ残していない。ボルヌ首相の後任として、今後どのような結果を残すのか注目だ。