かたつむりのフランス語カフェ

吾輩はふら語教師である。名前はかたつむりである。

いかにしてパリ暮らしの僕が将棋ファンになったか

僕は将棋ファンだ。将棋界の話題や情報は毎日チェックしているし、暇があればアプリで将棋を指している。レジェンドの羽生善治さんやスーパースターの藤井聡太さんはもちろん注目しているが、個人的に好きな棋士渡辺明さん、藤井猛さん、戸部誠さん。話がうまくて面白い人がやっぱり好きだ。

といっても昔から将棋が好きだったわけではなく、日本にいた頃は将棋に触れる機会というのはほとんどなかった。

僕が初めて将棋に興味を持ったのは、大人になってフランスに来てからである。2015年のことで、藤井ブームが起こる少し前のことだった。羽生さんの、いわゆる「羽生マジック」を集めた名場面集をYoutubeでたまたま観たのが始まりだった。

当時は将棋のルールもうろ覚えで、解説の先生が何を言っているのかイマイチよくわからなかった。しかし、プロ棋士の解説者も言葉を失う羽生マジックの凄さは実感できたし、驚嘆するコメントや対戦相手の表情の変化などが面白くて、何度も繰り返し観ていた。

おまけに、和室や和服、木製の将棋盤と漢字の刻まれた駒という対局環境もよかった。フランスに来てホームシックになっていたところもあったろう。

ほどなくアベマTVで羽生さんの対局を追うようになり、トップ棋士、解説者、聞き手の女流棋士の人の顔も覚えるようになった。一丁前の「観る将」になったと言える。ちなみに、アベマTVは基本的にフランスからは視聴不可なのだが、なぜか将棋チャンネルだけは視聴可能。僥倖としかいいようがない。

実際に自ら将棋を指し始めたのはコロナ禍の時だった。家にいる時間が増えて手持ち無沙汰だったところ、ふと「将棋を指してみよう」という考えが浮かんだ。我ながら妙案だと思った。どうしてその考えがもっと以前に浮かばなかったのか不思議である。素晴らしい思いつきに居ても立っても居られず、厚紙で将棋盤と駒を自作した。それから妻に「一緒に指してくれ」と懇願。「イヤ」と言う返事。すぐに、アプリをダウンロードして、コンピュータ相手に将棋を指し始めた。

以来、僕は観る将・指す将として、パリで生きている。まわりに将棋の話をする人はいない。パリにも将棋倶楽部があるらしいからそこに参加してみてもいいのだが、億劫でまだ重い腰が上がらない。

2023年は藤井聡太さんの八冠達成で日本の将棋界は大盛り上がりだった。今後の注目は藤井さんがいつまで八冠を防衛できるのか、誰がそれを阻止するのか、というところだ。

パリからひっそりと見守りたい。