ボンジュール!ふら語教師のかたつむりです。
今回は、"blanc"(白色) を使ったフランス語表現のお話。
"blanc"は「白色」という意味の何の変哲もない単語ですが、熟語として使われることで特殊な意味を帯びることがよくあります。
たとえば、"examen blanc"は「白い試験」ではなく「模擬試験」のこと。
日本語にも「白眉(はくび)」とか「赤の他人」とか「青写真」などなど、よく考えると「なんでこの色なんだろう?」と思う表現はたくさんありますね。
このように、往々にして意味の類推が難しく、知っていればわかるし、知らなければわからない。それが熟語・慣用表現の特徴です。
ということで、今回は、"blanc"(白色) を使ったフランス語慣用表現のなかから、比較的よく見かけるものを10個紹介したいと思います。
ちなみに、形容詞"blanc"が女性名詞につく場合は、女性形"blanche"になります。
それでは、ひとつずつ見ていきましょう。
目次
blanc(白色) を使ったフランス語慣用表現10選
1. Un examen blanc
「白い試験」で「模擬試験」となります。バカロレア模擬試験は"bac blanc" です。
2. Un mariage blanc
「白い結婚」で「偽装結婚」 。
例えば、移民の人が国籍を得るためだけに行う内実をともなわない結婚のこと。
3. Une nuit blanche
「白い夜」で「眠らない夜」のこと。 これは「ニュイ・ブランシュ」というイベントで有名ですね。
「ニュイ・ブランシュ」は毎年10月にパリの美術館が夜間営業する現代アートの祭典ですが、これだけ見ると「"nuit blanche"ってポジティブな意味なのかな」と思うかもしれません。
しかし、普通の日常会話の中で使われる"nuit blanche"は「眠りたいけど眠れない」というネガティブな意味で使われることが多いです。
J'ai passé une nuit blanche car mon bébé a pleuré toute la nuit.
赤ん坊が一晩中泣いたせいで、一睡もできなかった。
4. Une arme blanche
「白い武器」で「刃物」を指します。火器(arme à feu)に対して、ナイフ、包丁、刀、剣などの「刃のある凶器」のこと。
2024年2月3日、パリ・リヨン駅で刃物を持った男が起こした通行人襲撃事件に関するフィガロ紙の記事から次の文章を引用します。
Une attaque à l’arme blanche a fait au moins trois blessés samedi matin à la Gare de Lyon, à Paris
パリ・リヨン駅で土曜日の朝、刃物による襲撃で少なくとも三人が負傷した。
引用元:フィガロ紙
5. Donncer carte blanche
直訳は「白いカードを与える」で、「全権を与える」「完全なイニシアチブを与える」となります。
白いカードを渡された人は、そこに自分の好きな指示を書くことができるというイメージです。上司が信頼を置く部下に対して「白いカードを与える」ことが多いですね。簡単に言えば、「信頼しているから、好きなようにやってくれていいよ」ということです。
慣用表現化しているため、"carte blanche" は無冠詞。
Mon supérieur m'a donné carte blanche pour organiser le cocktail de fin d'année.
上司から年末のカクテルパーティを好きなように準備してくれていいと言われた。
なお、"avoir carte blanche"は「全権をもっている」という意味になります。
6. Avoir un blanc
"un blanc"は名詞として使われています。「空白をもつ」→「頭が真っ白になる」「(歌詞やセリフなどが)飛ぶ」という意味。
J'étais sur la scène en train de chanter et puis, tout d’un coup, j'ai eu un blanc.
ステージで歌っていたんだけど、突然、歌詞が飛んでしまった。
7. Se faire des cheveux blancs
「自分に白髪をつくる」→「ひどく心配する」という意味になります。心配すると白髪ができるというイメージですね。
Ma fille ne répond pas au téléphone depuis 3 jours. Je me fais des cheveux blancs.
娘が3日電話に出ない。私はひどく心配だ。
8. De but en blanc
「突然」「出しぬけに」という意味(語源は複雑なので割愛)。書き言葉でよく見かける表現です。
Elle lui a annoncé de but en blanc qu’elle était enceinte.
彼女は彼に向かっていきなり妊娠しているのと言った。
9. Cousu de fil blanc
直訳は「白い糸で縫われている」ですが、転じて「(策略、話の筋などが)見え見えである」という意味になります。
- C’était bien comme film.
いい映画だったね- L'intrigue était un peu cousue de fil blanc quand même !
ちょっと筋が見え透いてたけどね。
10. Être blanc comme neige
直訳すると「雪のように白い」ですが、肌の色のことではなく、「潔白である」「無実である」という意味です。「雪のように汚れがない」というイメージですね。
Je vous jure, monsieur, je n’ai rien fait, rien volé. Je suis blanc comme neige !
誓って何もしていませんし、何も盗んでいません。私は潔白です。
おまけ:Faire chou blanc(白いキャベツを作る)って何?
blanc(白色)を含む表現は10個というキリのいい数にしようと思っていたのですが、気づいたら11個になっていたので最後におまけでもう一つ慣用表現を追加します。知らないと絶対にわからない表現です。
直訳は「白いキャベツをつくる」ですが、白いキャベツにはまったく関係がありません。「期待していた結果が得られない」「失敗する」「何も獲得できない」という意味です。
語源:昔、ボーリング遊びで、ピンが一本も倒れないことを"faire coup blanc"「白い投擲をする」と言っていたそうですが(野球で言うところの空振りですね)、ベリー地方では "coup"(一撃) が "choup"と発音されており、その音が"chou"(キャベツ)と表記され今日に伝わったそうです。
J'ai cherché toute la journée un cadeau pour ma maman mais j'ai fait chou blanc.
一日中お母さんへのプレゼント探しをしたけど、何も見つけられなかった。
まとめ
以上、"blanc"(白色) を使ったフランス語慣用表現10個+おまけ1個を紹介しました。
いかがだったでしょうか?
今回は意味の類推の難しそうな慣用表現を中心に選んだので、"un vote blanc"(白紙投票)のような日常的に使うけれども意味を類推しやすい表現は除外しました。
"blanc"を使った慣用表現はまだまだありますが、その多くは古風な表現であったり、ほぼ書き言葉にしか見られない表現であったり、使用頻度がそれほど高くない表現になりますので、取りあえずこのくらいにしておきます。
近いうちに別の色を使った表現についても書くつもりです。
乞うご期待。
それでは、また。
À bientôt !