かたつむりのフランス語カフェ

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Netflixのフランス語ドラマ『なんたるフィアスコ?!』レビュー

ボンジュール!かたつむりです。

今回はフランスのドラマのお話。2024年4月30日公開のNetflixドラマ『なんたるフィアスコ?!』(原題『Fiasco』。大失敗という意味)を簡単にレビューしたいと思います。

©︎Netflix

本作は『Casting(s)』『FIVE』のイゴール・ゴーツマン監督、ピエール・ニネ、フランソワ・シヴィルが再結集した新作ドラマ。悪夢と化す映画撮影現場をドキュメンタリータッチで描いたコメディドラマです。各話40分程度で全7話。

結論から言うと、本作はコメディドラマとして個人的にかなり楽しめました。100発100中とまではいかなくても、60~70発くらいはしっかり笑わせてきます。傑作とは言えないかもしれませんが、1日の終わりにリラックスして観るにはうってつけのドラマです。

ということで、この記事では『なんたるフィアスコ?!』のどういう点が良かったのかを手短に紹介したいと思います。

ネタバレは最小限にとどめましたが、一部ネタバレも含まれるのでご注意ください。

目次

1 あらすじ

まずはあらすじを手短に紹介。

若手映画監督のラファエル(ピエール・ニネ)はプレッシャーを感じながらも初めての長編映画撮影を開始する。レジスタンス(ナチス抵抗運動家)であった祖母の勇敢な人生へのオマージュ映画である。主演女優は子供の時から恋焦がれているイングリッド(レスリー・メディナ)。しかし、撮影はスムーズに運ぶどころか、さまざまな問題が積み重なり、さらには内部から妨害工作を企てる者まで現れ、さながら悪夢のような様相を帯びていく...

日本語字幕ありの予告編はこちら↓


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2 ちょうど良い長さ

1時間のドラマって少し長いと思うことがありますが、本作は各話 40分程度ということで、ちょうど良い長さになっています。

また、全7話ありますが、物語が二転三転するので、内容が一本調子だと感じることもないと思います。基本的に各話の最後で新しい展開が生まれるので、すぐに次が観たくなります。

早い話、はまります(たぶん)。

3 キャスティングが最高

本作で監督を務めるのは、『ファミリービジネス』『FIVE』のイゴール・ゴーツマン。イゴール・ゴーツマンといえば、最近フランスで人気急上昇中の鬼才コメディ監督です。(『ファミリービジネス』は別の記事で紹介していますので、まだ観たことのない方はそちらをご覧ください:Netflixで観られるおすすめフランスドラマ・ベスト3 )。ちなみに、イゴール・ゴーツマンは監督兼俳優でもあります。『なんたるフィアスコ?!』のなかでドキュメンタリー監督スライスを演じているのは、イゴール・ゴーツマン自身です。

本作で主演を務めるのは若手イケメン俳優のピエール・ニネ。彼は『FIVE』でイゴール・ゴーツマンとタッグを組みましたね。

本作の脇を固めるのは、フランソワ・シビル(ラファエルの高校時代からの友達で俳優志望のトム役。『FIVE』出演)、ジェラルディン・ナカシュ(助監督のマガリー役)、パスカル・デモロン(プロデューサーのジャン=マルク役。『FIVE』出演)、レスリー・メディナ(主演女優のイングリッド役)、ルイーズ・コルデフィ(メイクのリュディヴィーヌ役。『ファミリービジネス』『FIVE』出演)などなど。

イゴール・ゴーツマン作品ファンには知った顔が散見されて嬉しいですね

今回のキャスティングで僕が個人的に面白いと思ったのは、研修生のガブリエル役を演じたジュリエット・ガスケ(Juliette Gasquet)さん。まだ17歳らしいですが、良い味を出していました。今後に期待。

4 ピエール・ニネの場違いなユーモアが最高

本作の見どころは悪夢と化す映画撮影現場のドタバダですが、ドタバタの中心には常に映画監督のラファエル(ピエール・ニネ)がいます。惨事に対処するラファエルの言動が面白いかどうかにこの作品がかかっています。

端的に言って、本作のピエール・ニネの演技には個人的にたいへん感心しました。人気俳優なので当たり前ですが、やっぱり演技がうまいですね。ただのイケメン俳優というだけではない。

ラファエル(ピエール・ニネ)の言動の面白さは、けっこう奥が深い面白さだと思います。というのも、ラファエルって、若手映画監督で、初めての映画制作にプレッシャーを感じていますが、基本的に思いやりのある善意の男です。ただ、プレッシャーがかかったり、気不味い雰囲気になったりすると、ユーモアのあることを言って人を笑わそうとするのですが、そのユーモアが場違いなユーモアになったり、かなりアグレッシブなユーモアになることがあって聞いている相手がそれで傷つくことすらあります。しかし、本人のラファエルは冗談のつもり。このナイーブさが可笑しいんです。

たとえば、ラファエルは制作チームへのスピーチで、ケベック人スタッフのフランス語が下手なことをイジることは絶対に許さないと言い渡すのですが、どんな風にイジったらダメなのかを彼女の話すフランス語のモノマネをして説明するので、それ自体がイジリになってしまっている、といった調子。

こういう善意の裏にある不必要なアグレッシブさが最高でした。

5 意外に複雑な構造

本作は悪夢と化す映画撮影現場を描いたドタバタコメディですが、やや複雑な構図をしています。

まず『なんたるフィアスコ?!』という私たちの見ているNetflixドラマがあります。その中で、映画監督のラファエルはある映画の撮影をしています。そして、その映画のメイキング映像をドキュメンタリー映画作家のスライスが撮影しています。そのドキュメンタリーが『なんたるフィアスコ?!』というドラマになり、最終話で上映会が行われます。

お分かりでしょうか。私たちが見ているものが私たちが見ているものの中で作られているという構図。僕自身はこういう入れ子型の構造をした作品って頭が痛くなってあまり好きではないのですが、面白い趣向であるという意見もぜんぜんあると思います。

 

まとめ

以上、Netflixの最新ドラマ『なんたるフィアスコ?!』を簡単にレビューしました。

最初にも言いましたが、結構楽しめる(笑える)作品になっていると思います。興味のある方はぜひ見てみてください。

それでは、また。

À bientôt !