2024年2月23日、第49回セザール賞受賞式がパリのオリンピアで行われました。
今回の授賞式では、ジュスティーヌ・トリエ監督の『落下の解剖学』が最優秀作品賞を含む、6部門でセザール賞受賞しました。
ちなみに、『落下の解剖学』はちょうどこの日、日本公開日でしたね。みなさん、もうご覧になりましたか?
さて、今回の授賞式のハイライトは、映画業界に未だに蔓延る性差別・性暴力に抗議する女優ジュディット・ゴドレーシュさん(51)のスピーチでした。
ゴドレーシュさんは先日、二人の映画監督(ブノワ・ジャコ氏とジャック・ドワイヨン氏)を児童強姦罪で告訴して、話題になりましたね。(詳細は次の記事をご覧ください:仏女優がジャック・ドワイヨン監督らを児童強姦罪で告発(2024年2月) - かたつむりのフランス語カフェ)
今回のスピーチでゴドレーシュさんは改めて、性犯罪を包み隠す映画業界と、行動を起こそうとしない業界人たちを批判しました。
「しばらく前から、言葉が解放され、映画の立役者たちの理想化されたイメージが剥がれ落ち、その権威が揺らいでさえいるかに見えます。私たちが真実を真正面から見つめることは可能なのでしょうか?自らの責任を取ることは可能なのでしょうか?自らの過ちを問う業界の俳優・女優であることは可能なのでしょうか?しばらく前から、私は語り続けていますが、あなた方の声は聞こえてきません。ほとんど全く。あなた方はどこにいるのですか?何をおっしゃっているのですか?聞こえてくるのは、ひそひそ声や遠回しな言葉ばかりです」
ゴドレーシュさんのスピーチは会場の映画関係者たちからスタンディング・オベーションで迎えられました。会場には文化相のラシダ・ダチ氏もいましたが、彼女も率先してスタンディング・オベーションに参加。
SNS上でもゴドレーシュさんのスピーチに賛同する声、声、声。
しかし、セザール賞といえば、2020年の授賞式で児童強姦罪で有罪判決を受けたロマン・ポランスキーに最優秀監督賞を授与して、女優のアデル・エネルが途中退場するなど、物議を醸したことで有名ですね。
ちなみに、アデル・エネルは2019年にクリストフ・ルッジア監督から受けた性被害を告発し、2022年、保守的な映画界に嫌気がさして引退を表明しました。ボクは個人的に大好きな女優さんだったので、とても残念です。
というわけで、今回のスタンディング・オベーションが実際に映画業界の変革につながるのかどうかには疑問が残ります。
アデル・エネルが言っているように、フランスの映画業界は非常に「保守的で、人種差別的で、家父長制的」だそうなので。
しばらく、どうなるのか見守りましょう。