かたつむりのフランス語カフェ

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現代フレンチポップの個性派歌手ポムPommeのおすすめ曲・5選

ボンジュール!ふら語教師のかたつむりです。

今回は現代フレンチポップのお話。

前回はフレンチポップ界の新星クララ・ルチアーニを紹介しましたが、今回は僕が個人的に気に入っているシンガー・ソングライターのポム(Pomme)を紹介したいと思います。

ポムは日本ではほぼ無名の歌手ですが、フランスでは若者を中心に揺るぎない支持を得ています。

聴く人の心を打つ詩的で個性的な歌詞、どこか懐かしさを感じるフォーク調のポップ、女性や性的マイノリティの地位向上を掲げる政治的メッセージ性がポムの音楽の特徴と言えるでしょうか。

この記事では、ポムのプロフィール、略歴、音楽的特徴を紹介し、初めてポムを聴く人のためにおすすめの曲を5曲紹介したいと思います。

目次

I. ポムのプロフィール

活動名 ポム Pomme
本名 クレール・ポメ Claire Pommet
国籍 フランス

生年月日 1996年8月2日

出生地 デシーヌ=シャルピュー(フランス)

II. ポムの略歴

リヨン近郊で音楽に囲まれた子供時代を過ごす

ポムは、1996年8月2日、リヨン近郊で生まれます。母親は刑務所の教師でフルート奏者。

6歳でソルフェージュを学び、7歳でリヨン屈指の児童合唱団に入ります。チェロ(8歳)をはじめ、さまざまな楽器の演奏にも小さい頃に慣れ親しんだそうです。

思春期にはリヨンのバーでギターの弾き語りをしたり、YouTubeに自作自演の楽曲を投稿したりしています(YouTubeに投稿したビデオはそれなりの成功を収めました)。

パリで本格的に音楽活動を始める

大学では英語専攻だったようですが、音楽に打ち込むため中退。19歳でパリに上京し、本格的に音楽活動を始めます。

レーベル契約とシングル盤・アルバム盤のリリース

2015年、レコード会社Polydorと契約。初シングル盤「En cavale」が2016年に発売。

2017年、21歳で初アルバム『À peu près』をリリース。3万枚の売り上げ。

2019年、セカンドアルバム『Les Failles』をリリース。このアルバムにより、フランス最高峰の音楽賞ヴィクトワール賞新人アルバム賞を受賞。

2021年、ヴィクトワール賞女性アーティスト賞を受賞。

その後、ケベックに渡り、サードアルバム『Consolation』の制作に専念。

2023年、新作のコンセプト・アルバム『Saisons』(パート1)を発表。

III. ポムの音楽の特徴

聴く人の心を打つ詩的で個性的な歌詞、どこか懐かしさを感じるフォーク調のポップがポムの特徴といえます。

さらにポムは政治的なメッセージ性の強いアーティストとしても有名。女性や性的マイノリティの地位向上と、そのための社会の意識改革の必要性を訴え活動中。

ポム自身、同性愛者であることを公言しています。プライベートではケベックの女性歌手Safia Nolinと交際しているそうです。

IV. ポムのおすすめ曲・5選

1. Pauline ポリーヌ


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ファーストアルバム『À peu près』収録。

(おそらく同じ学校に通う)美人でモテモテの女の子ポリーヌに(心の中で)呼びかけ、「お願いだから彼にだけはちょっかいを出さないで」と懇願する曲。

「私」には好きな男の子がいるのですが、「美人のポリーヌが少しでもその気を見せればホイホイついていってしまい、私は終わってしまう」という、思春期ならではの嫉妬と不安を歌っています。

2. De là-haut  あの世から


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ファーストアルバム『À peu près』収録。

この曲でポムは、あの世から自分のお葬式を眺めているところ想像しています。しかし悲壮感はなく、出だしを聴くとなんだかジブリ映画のテーマ曲みたいですね。

ただ、歌詞の内容はそれほどウキウキしたものではなく、全体に超然としたところと静かな哀しみが感じられます。

僕は個人的にこの曲が大好きです。

冒頭は次の通り。

Voilà qu'on pleure autour d'une croix
Qu'on jette des fleurs, qu'on parle de moi
C'est une belle journée d'été
Tout le monde s'est habillé

十字架の周りでみんなが泣いている
花を投げ、私のことを話している
美しい夏の一日
みんなあらたまった服を着ている

3. A peu près なんとか(立ち直ることができたら)


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ファーストアルバム『À peu près』収録。

愛する人との別れを歌った曲。

この曲はまさにポエムですね。曲の中にも19世紀の詩人ヴェルレーヌとランボーの名前が引用されています。

ちなみに、ヴェルレーヌとランボーは当時、同性愛の関係にあったのですが、別れ話がこじれてヴェルレーヌがランボーの左手首をピストルで撃ったエピソードは有名です。

ミュージック・ビデオを見ると明白なのですが(ビデオで元彼を演じているのはお笑い系人気ユーチューバーのCyprien)、この曲は、失恋の痛みだけではなく、恋人への復讐も匂わせています。

4. Anxiété 不安


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セカンドアルバム『Les Failles(欠陥)』のオープニングソング。

セカンドアルバムでポムは自身の問題や弱さ(いわゆる「欠陥」)をテーマにしています。「不安症状」はその一つ。

歌詞の中の「私」は「不安」の擬人化と考えていいでしょう。

出だしからかっこいいですね。

Je suis celle qu'on ne voit pas
Je suis celle qu'on n'entend pas

私は人には見えない存在
私は人には聞こえない存在

ミュージック・ビデオは、群衆、医療検査、ソーシャルネットワークのイメージが水のようにやって来てポムを窒息させると言うもので、僕には強すぎるためリンクは映像無しの音源にしました。

5. Grandiose 壮大なもの


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セカンドアルバム『Les Failles(欠陥)』収録。

子供を持つことができない辛さを歌った曲。

「女性は子供を作るべきだ」という社会の圧力・規範に反対する人間として「子供を作るべきではない」と自分に言い聞かせるものの、「子供が欲しい」という私的な願望は切々と存在しています。

その葛藤をとらえた曲です。

まとめ

以上、現代フレンチポップの個性派歌手ポムのオススメ曲を紹介しました。気に入った曲はあったでしょうか?

ポムは2024年3月22日に新譜『Saisons』(パート2)をリリースする予定です。

興味のある方はぜひ聴いてみて下さい。

それでは、また。

À bientôt !