かたつむりのフランス語カフェ

吾輩はふら語教師である。名前はかたつむりである。

カンヌ映画祭女優賞のトランスジェンダー女優が仏極右M・マレシャルを告訴

ボンジュール!かたつむりです。

さて、今回は第77回カンヌ国際映画祭の後日談。

先日、パルムドール(ショーン・ベイカーの『Anora』)と各賞の受賞作が発表されて幕を閉じたカンヌ映画祭ですが、女優賞は個人受賞ではなく『Emilia Perez』の女優陣4名が同時受賞しましたね。

アドリアナ・パズ、ゾーイ・サルダナ、カーラ・ソフィア・ガスコン、セレーナ・ゴメスの4名ですが、グループ受賞の理由は、彼女たちの素晴らしい演技がグループとして切り離すことのできないものであったためだそうです。

で、今回取り上げるのは、この4人グループのひとり、カーラ・ソフィア・ガスコン(Karla Sofia Gascon)さん。彼女は52歳のスペイン人でトランスジェンダーの女優さんなのですが、今回の受賞により、カンヌで女優賞を獲得した史上初のトランスジェンダー女優になりました。

2024年5月19日カンヌ映画祭にて スペイン人女優カーラ・ソフィア・ガスコン 
©︎VALERY HACHE / AFP

と、そこまではよかったのですが... 

ガスコンさんがカンヌで女優賞を受賞したことを受けて、フランスの極右政治家マリオン・マレシャルはXで以下のようにツイート。

要するに、男がカンヌで「女優」賞を受賞したということね。
左翼にとっての進歩というのは女性と母親を殺すことにすぎない。

トランスジェンダー女優カーラ・ソフィア・ガスコンがカンヌで女優賞を受賞したことに対する仏極右政治家マリオン・マレシャルのツイート

マリオン・マレシャルは仏極右政党「Reconquête !(再征服)」の筆頭候補として、2024年欧州議会選を6月に控えていますが、このツイートは炎上し、トランスフォビア発言を理由に6つのLGBTQ権利擁護団体から訴えられることになりました。

そして、さらにその2日後、今度は当事者のカーラ・ソフィア・ガスコンさん自身が「ジェンダー・アイデンティティに基づいた性差別的発言」を理由にマリオン・マレシャルを告訴。「この種の発言はもう終わりにしなければいけない」とガスコンさんは語っています。

ちなみに、カーラ・ソフィア・ガスコンさんは2018年のときに性別移行(ジェンダー・トランジション)を行ったそうですが、ジャック・オディアール監督の『Emilia Perez』の中でも性別移行を行なっています。

LGBTQ団体によると、フランスではトランスジェンダーの人の85%が、なんらかの差別、嫌悪的発言、肉体的暴力、精神的暴力の被害にあったことがあるといいます。

フランスでは「トランスフォビアは個人の意見ではなく罪」なのですが、果たしてマリオン・マレシャルの発言がどのような処分を受けるのか(受けないのか)注目です。

今回は以上となります。

それでは、また。

À bientôt !