かたつむりのフランス語カフェ

吾輩はふら語教師である。名前はかたつむりである。

フランス語で本を読もう① 村上春樹『ノルウェイの森』

ボンジュール!かたつむりです。

みなさん、最近本読んでいますか?

ぼくはというと、日本語・フランス語を問わず、ここのところまったく本を読んでいません。よく考えたら、今年になって一冊も本を読んでいない気がします。

もちろん、仕事に必要な本は読んでいます。語学学習関連の本とかそういうものは。

でも、娯楽や趣味のための読書ってここのところしていません。学生の頃はそれなりの読書家だったことを思えば、昔日の感があります。

と、考えれば考えるほど無性に本が読みたくなってきたので、パリの本屋さんでしばらく迷った末に、村上春樹の『ノルウェイの森』のフランス語版を買うことにしました。

フランス語タイトルは 「La Ballade de l'impossible」。「不可能のバラード」という意味で、日本語オリジナルタイトルは見る影もありません(笑)。昔はこのフランス語タイトルを見るたびに「取ってつけたようなタイトルだな、ダサいなあ」と思っていたのですが、今よくこの洋書カバーを見ると(素敵なカバーですね)、「la ballade」(バラード)が「la balade」(散歩)と掛けられているのかなとふと思いました。『ノルウェイの森』ではたしかに「散歩」が重要なモチーフとして出てきますね。

我々は二人で東京の町をあてもなく歩きつづけた。坂を上り、川を渡り、線路を越え、どこまでも歩きつづけた。どこに行きたいという目的など何もなかった。ただ歩けばよかったのだ。まるで魂を癒すための宗教儀式みたいに、我々はわきめもふらずに歩いた。

村上春樹著『ノルウェイの森』

もしそれが本当なら、仏語タイトルには「どこにも辿り着かない不可能のそぞろ歩き」みたいな意味が隠されていることになります。言葉遊びが好きな、いかにもフランスっていう感じのタイトルですね。

 

                 *   *   * 

 

これを書いている時点で第二章まで読み終えました。フランス語でもしっかり『ノルウェイの森』の空気を味わうことができます。

ただ、フランス語はそれはど簡単ではありません。「フランス語で本を読もう」というタイトルですが、残念ながら初級者の方には難しすぎると思います。

参考までに、先ほど引用した箇所のフランス語訳はこうなります。

Nous continuions à errer ensemble à travers la ville. Rien ne nous arrêtait : nous gravissions des collines, nous franchissions des fleuves et nous traversions des rails de chemins de fer. Nous n'avions aucun but. Il nous suffisait de marcher. Nous étions absorbés dans notre errance, comme au cours d'un rituel d'exorcisme.

Haruki Murakami, La Ballade de l'impossible.

nousの半過去形がたくさん出てきたりして、けっこうムズイですよね。

ということで、この本をオススメするのは『ノルウェイの森』を愛好するフランス語中級レベル以上の方です。該当する方は、チャレンジしてみてはいかがでしょう?

「日本語のこういう表現はフランス語ではこんな風になるんだ」という面白い発見がたくさんあると思いますよ。

それでは、また。

À bientôt !